マダガスカリエンセは、貯水葉にワッフル状の凸凹があり、その姿はとても個性的でマニア受けするビカクシダです。高湿度環境を好むので、他の種類のビカクシダと扱いが少し異なります。しかしながら、美しく育つとそれだけ満足度が高いビカクシダだともいえます。
我が家で育てているマダガスカリエンセOC〔オリジナルクローン〕は、貯水葉も胞子葉もワッフル状の凸凹がはっきりと深い特徴がある個体です。貯水葉は、比較的早い時期から凸凹が現れ始め、新葉ごとに凸凹が深くなっていきます。胞子葉は、つるんとした状態から2年前後で凸凹の特徴が現れました。胞子葉に凸凹がはっきりと出る個体は、割とレアではないかと思います。市場に出回っているマダガスカリエンセも特徴には個体差があるので、お好みのものを入手するには、入手しようとしている株の親株情報はチェックしておく必要があります。
また、高湿度環境を保つ必要があるため扱いが難しいとされるマダガスカリエンセですが、日本の環境に順応し、育てやすくなっているものもあります。我が家のOC株も特別な設備なく、オープンな環境で問題なく育っています。ビカクシダを育てるのに慣れていない方やマダガスカリエンセを簡単に育てたいという場合は、国内に馴化しているかどうかもチェックポイントですね。
この記事では、マダガスカリエンセの特徴や、入手時の留意点、我が家での育て方について、感想も含めてご紹介します。
尚、我が家では細葉タイプのマダガスカリエンセも育てています。結構乾燥に弱くデリケートなタイプですが、その育て方と育ちの記録の記事がこちらにありますので、ご興味のある方はご覧ください。
オリジナルクローン〔OC〕株って?
マダガスカリエンセは、ビカクシダの原種の一つで、マダガスカルの固有種です。ですので、マダガスカリエンセのオリジナルクローン〔OC〕は、原種由来の子株ということになりますね。人為的な胞子培養や組織培養技術〔メルクロン〕で作られたものではないということです。尚、厳密にいうと人為的な胞子培養株は、クローンではないので、『マダガスカリエンセ』の名称を名乗れません。『マダガスカリエンセ胞子培養株』です。
オリジナルに対して人為的に成長点を培養して増やした株は、メリクロン株といいます。メリクロン株は人為的なクローンですので、遺伝子はオリジナルと同一のものということになります。
ちなみに園芸種の場合ですと、人為的に交配した株の中から選抜した唯一の株がオリジナルで、そのオリジナルから自然に発生した子株をオリジナルクローン〔OC〕と呼びます。
オリジナルクローンなら、遺伝子的には皆同じ?
オリジナルクローンと呼ばれて流通しているものでも、貯水葉のワッフルの凸凹具合など個体差があります。マダガスカリエンセは、マダガスカルの固有種ですが、自然に交配して増えているはずですし、枝替わりも出ますよね。ですので、OCのものでも違いがあって当然なのかなと思います。
我が家のマダガスカリエンセOC株は、貯水葉・胞子葉ともに凸凹が深い個体です。クローンと称されるものは、遺伝子は同一のものなので、良好に育てば親株と同様の特徴に育ちます。ですので、幼苗を入手される場合は、親株の姿を見て、好みのものを選ぶといいですね。
尚、胞子培養株は、親株と同じ特徴そのまま育つかどうかわかりません。ですので、親株や兄弟株は参考程度にして、購入を考えている株の生育状態や特徴を見て判断するのがいいと思います。
マダガスカリエンセを育てるのは難しい?
我が家では、数種類のビカクシダを育てていますが、育てる環境に関して言えば、他のビカクシダに比べ、高湿度環境を好むので、マダガスカリエンセは手のかかるほうだと思います。また、比較的穏やかな気温の方が育ちやすいです。
我が家でもう一つ、細葉タイプのマダガスカリエンセを育てているのですが、この我が家の細葉タイプは乾燥に弱く非常にデリケートです。それに対し、我が家のOC株は幼苗の頃から乾燥にも強く丈夫なんです。そのように、国内で売られているマダガスカリエンセも、育てやすさの点では、株によってその難易度が異なるといえます。
国内馴化株は比較的丈夫で育てやすい
どのような株が育てやすいかといえば、国内で生まれ育ったものが、馴化していて育てやすいといえます。OCでも長く国内で育ってきたものは、馴化しているものがあります。我が家のマダガスカリエンセOC株は、お譲りいただいた方から国内馴化株で育てやすいとお伺いしていたのですが、本当にすごく育てやすいです。一般的なマダガスカリエンセよりも少し乾燥に強いだけなのですが、かなり育て方が容易になります。高湿度を保つ温室などの特別な設備が必要なく、オープンな環境で育てられるので、取り扱いが非常に楽となります。
ですので、育てやすい株を入手したい場合、国内馴化株を選ぶといいですね。国内馴化株かどうかお伺いできるような信頼できる販売者さんを選ぶのも大事かもしれません。
マダガスカリエンセの育て方
板付けはいつする?
親株から外すのは、ある程度大きくなってからにしています。だいたい葉の径が5㎝前後くらいになれば株分けします。そして幼苗の頃は、鉢植えで管理しています。ミズゴケとベラボンを同量程度混ぜた用土に植えます。高湿度を保つためにカバー付きの育苗箱の中で管理しています。
5㎝を超えるとカバーを使用しなくても育てることは可能ですが、カバー付きの環境で管理するほうが、湿度管理が楽で安心です。尚、葉の径10㎝超えて板付けできる大きさになるまで、この状態で育ててます。株一つならフードバックでも育苗できます。下の写真は、トマトのフードパック大小を組み合わせて使ってます。
葉の径、10㎝を超えると板付けできる大きさになります。
マダガスカリエンセは、板付けしてもかっこいいですが、鉢植えのまま育てても趣のある姿に育ちますよ。
育て方のポイント
だいたい、以下の点を注意しています。
- 通年直射日光を避け、明るめの日陰や室内のレースのカーテン越し明るさの場所で管理する。
- 15℃~25℃くらいが適温。安定して生育させるには、その範囲からあまりずれない環境で育てる。
- ミズゴケが湿った状態を保ち、カラカラに乾かないように注意する。
- 肥料を好むので、緩効性肥料や液肥などを適期与える。
- ワラジムシやコナカイガラムシなど、付きやすい害虫に注意する。
以下、詳細を書き留めます。
直射日光を避ける
ビカクシダの仲間は日当たりを好むものが多い中、マダガスカリエンセは、比較的日陰で育ちます。もちろん植物なので日光は必要ですが、年中直射日光に当てずに育てています。屋外では明るめの日陰、室内ではレースのカーテン越しの窓辺などで育てるほうが、きれいに育ちます。
適温を保つ
気温もそれほど高くない(25℃以下)方が育ちやすいのではないかと思います。というのも、秋から春まで一日中20℃前後で育てている時期が調子よくすくすくと育ちます。
秋・春は、ベランダの軒下に吊るして管理しています。
夏は、打ち水などして気温を下げるよう工夫していますが、猛暑時は室内に避難させています。室内の窓際など明るめの場所で育てます。
冬は、気温が15℃を下回ると室内管理に切り替えます。冬は、室内によく陽が入るので、レースのカーテン越しの場所で管理します。
湿度が高い環境で育てるときれいに葉が展開する
一般的にマダガスカリエンセは、空中湿度が高い環境で育てると葉が割れたりせず、きれいに展開します。育ててみて貯水葉の端が切れたり、形がいびつになった場合などは、状況に応じて高い空中湿度を保てるように工夫したほうがよいでしょう。
根回りに関しては、ミズゴケがしっとりと水分を含んでいる程度に保つのがよいかと思います。ただし、いつも水に浸っていたり、空気が通らないほどびしょ濡れにならないよう注意します。マダガスカリエンセだけでなく植物全般、過湿は腐らせる原因となります。マダガスカリエンセにとっての適度な湿り気が必要です。
我が家のOC株は、比較的乾燥に強いので、特別な設備に入れることなく、季節に応じて屋外と室内に吊るして管理しています。
水やりは、ミズゴケが常に湿度を保つくらいを目安に適宜水やりします。ほぼ日に1~2回全体を湿らします。水やりの際、じょうろで葉やミズゴケ部分に水をかけてあげますが、貯水葉の凹みに水が溜まったままにならないようにしましょう。貯水葉の凹みに水が溜まってしまったら、フッと息をかけて吹き飛ばします。
冬季など乾燥しやすい時期は、カラカラに乾かないよう気を付けます。こまめに霧吹きで葉水してやるのもいいですね。
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肥料は大好き
マダガスカリエンセは、肥料を好みます。我が家では、固形肥料を通年使っています。また、生長期には、液肥も週に一度程度併用しています。
スプレー式の活力液や肥料も様子を見て使っています。活力液は、時々使うと効果的に思いますし、肥料はスプレー式で葉に直接掛けるタイプのものは、なかなか便利で使いやすいですね。
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虫に注意
我が家で困っている害虫は、ワラジムシとコナカイガラムシです。
マダガスカリエンセを屋外の地面に近いところで管理すると、ワラジムシの恰好の餌食になります。ワラジムシ程度なら大丈夫と放置すると数が増えて貯水葉を食い荒らされます。ひどい場合は、生長点まで被害に及ぶ場合があります。生長点を食われると致命的ですので、見つけたら早いうちに対処するほうがいいですね。
屋外で管理する場合は、高い場所で管理した方がよいです。それでも付いてしまった場合の我が家の退治方法は水攻めです。マダガスカリエンセ全体を水に浸け、しばらく置くとワラジムシが出てくるので、それらを駆除します。
また、比較的暗い場所でも育つため、コナカイガラムシも付きやすいです。胞子葉の裏など、こまめに点検して駆除します。コナカイガラムシは、駆除しきるのがなかなか難しい害虫です。成虫には薬が効きにくいので、つまようじやブラシなどを使ったり、ティッシュで拭き取ったりして駆除します。幼虫には薬が効くので、綿のような巣を見つけたら、取り去った後にスプレー式の薬を散布するといいですね。我が家はベニカXファインスプレーを使っています。
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以前から育てている細葉タイプのマダガスカリエンセの育て方と育ちの記録の記事がこちらにあります。
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