〔2022年5月27日〕
2017年1月に苔玉ハンギングスタイルのスパーバムをネットで購入しました。スパーバムはビカクシダの中では、かなり大きく生長する品種です。生長に伴い、現在に至るまで2回仕立て直しをしています。具体的には、2018年5月に苔玉一回り大きくして維持するために取っ手付きの金網ザルを使って仕立て直し、2020年3月には、バージンコルクに板付けして現在に至ります。
スパーバムはある程度育たないと胞子葉が出ませんが、2年目あたりで胞子葉が出始め、今ではすっかり大人の風格です。
スパーバムはビカクシダの中でも丈夫で育てやすいと思います。白いトリコームに包まれた新しい貯水葉は、ずっと見ていても飽きないくらい美しいです。王冠のような貯水葉と、ワイルドに垂れ下がる胞子葉は、雄々しく圧倒的な存在感です。
スパーバムの育て方や注意点、育ちの様子をご紹介します。
こちらは生長のまとめ記事です。購入時についてはこちら、夏の育て方についてはこちらもご覧ください。
2018年5月にひと回り大きな苔玉に植え替えた記事はこちらを見てください。
2020年3月にバージンコルクに板付けしました。その時の様子はこちらを見てください。
5年でどれだけ生長する?
〔2017年02月〕
購入した直後です。とてもかわいらしいイメージです。
〔2018年03月〕
1年後には少し存在感が出てきました。
大きくなり、維持できなくなってきたので2018年5月に取っ手付きの金網ザルを使って仕立て直ししました。
〔2019年03月〕
2年後には、かなりの存在感。翼で空中を飛んでるみたいです。大きくなりました。スパーバムはのびのび育てると巨大化するようですが、今くらいが我が家にはちょうといいくらいの大きさです。そして、待望の胞子葉が出てきています。
小さいころは、貯水葉も小さく、苔玉を覆うまでに至りませんが、次々と出る貯水葉は出るたびに大きくなって上部の切れ込みの数が多くなり長く複雑になります。苔玉を覆うように育つので、正面から見ると中央で少しくびれて上部が広がる形になります。苔玉のハンギングスタイルは、このように植木鉢や板付けとは少し違ったフォルムを形成します。
貯水葉は左右交互に育ちます。1枚の貯水葉の芽が出て育ち、次の貯水葉の芽が出てくるまでは2か月半~3か月です。夏場は少しだけ生長が早いですが、冬場でも室温が安定して暖かいと止まることなく順調に生長します。
〔2019年05月〕
そして胞子葉が立派に伸びてワイルドになりました。存在感すごいです。
〔2020年02月〕
胞子葉が立て続けにでるようになりました。昨年の夏、向かって右の貯水葉が、夏の暑さで委縮して育たなかったのに、胞子葉ばかりでて、貯水葉がでてきません。はやく出てきてほしいなー。
一年で胞子葉が3枚に増えました。最初に生えたのはもう茶色くなってきているので、近いうちに切ってしまおうと思っています。けっこうな迫力です。
〔2021年02月〕
貯水葉の上部の切れ込み部分はとてもシャープになり、鹿角らしい風格が出てきました。胞子葉も長ーく垂れ下がります。初めは奇異な感じに思いましたが、見慣れるとかっこよく思えます。
去年の夏日焼けして先端の切れ込み部分が縮れてしまった貯水葉〔向かって右側〕ですが、本来なら、次は、交互に左側が出るはずなのに、同じ右側に続けて新しい貯水葉を展開しました。スパーバム自身も右側を補わなければという自覚があるのでしょうかね…。胞子葉が出るようになってから時々順番が狂うので、生長点(芽)の位置次第なのでしょうか。わかりませんが、今回は都合がよく順番が狂いました。
〔2021年05月〕
向かって右側の貯水葉が生長し、バランスのよいかたちになりました。反対側に次の貯水葉が出てきています。今から育つと7月いっぱいで新しい貯水葉も大きくなるはずです。葉焼けのダメージを受けるのはいつも8月中なので、8月までに生長しきったら、室内で夏越しさせようかなどど考えています。
どこまで大きくなるのでしょうか…。だけど、この存在感、かっこいいです。
〔2021年07月〕
無事、8月に入る前に左右の貯水葉が出そろいました。貯水葉の生長途中に葉焼けすると、生長が止まり縮れや萎縮がでます。葉焼けについてはこちらを見てください。夏のベランダは、スチームサウナ並みの高温多湿環境なので、直射日光に当てなくても、葉焼け症状がでます。今年は、暑くなるまでに成長し、久しぶりのきれいな姿にうれしくなりました。
しかし、気になる茶褐色の斑点が、胞子葉と、貯水葉の葉の先の部分に出現。徐々に増えていきました。初めは日焼けかなと気にしてなかったのですが、どうやら褐斑病のようです。
胞子葉は切り取り、貯水葉はベニカXファインスプレーで対処しました。経験的なことなのですが、生長点が健全で、病変部の殺菌で食い止められれば、問題はないと思われます。生長点がやられるとかなり深刻な事態になりますけどね。
〔2022年05月〕
昨年は、タイミングよく真夏を避けて貯水葉が出たので、葉の先まで葉焼けすることなく生長しました。やはり、貯水葉の生長のタイミングで葉焼けすると縮れて葉先が伸びなくなってしまうんですね~。今の時期からは胞子葉が出てくれれば、うまく夏越しできるんですけど。
横にビカクシダの子株たちをかけていますが、大きさずいぶん違いますね。大きく生長してますが、コルクに着生させてるので見た目感じるより軽いんです。
ハンギングスタイルの生長に合わせてた植え替え
苔玉仕様では、生長するにしたがって自重でスパーバム全体が下を向くようになり、しっかりとした土台での植え替えが必要になりました。頑丈なもので苔玉を支えたり、板付などで支えます。
〔植え替え前〕
〔植え替え後〕
2018年5月にひと回り大きな苔玉を取っ手付き金ザルで維持する方法で植え替えた記事はこちらを見てください。
2020年3月にバージンコルクに板付けしました。その時の様子はこちらを見てください。
ビカクシダ・スパーバムの特徴
葉は貯水葉と胞子葉と二種類ありますが、スパーバムの場合ある程度大きくならないと胞子葉は出てこないようです。胞子葉はその名の通り胞子を付ける葉です。購入後2年経ってようやく胞子葉が出てきました。
貯水葉もその名の通り水を貯える葉です。
貯水葉の役割
貯水葉は枯れると水を貯えるスポンジのような働きをするので、枯れても取り除かないようにします。元々ビカクシダの原産国では乾季と雨季がありその環境で生存するためのしくみですよね。よくできていると感心します。
また、上部の切れ込み部分が開いたようになっていて、雨を効率よく受けたり、虫の死骸などを集めて分解し養分にしているようです。外で水をかけてやるときは、この上の部分に葉と葉の間にも水が行き渡るように水をかけてやります。また、固形肥料なども枯れた葉の隙間や苔玉の上に置くようにしています。
トリコームの役割
若い貯水葉では、葉の表面を覆う白くふわふわしたトリコームがびっしりと生えており、葉が生長して大きくなるにしたがって、伸びる端のほうのトリコームが薄くなっていきます。トリコームは、強い光から身を守る役目や、空気中の水分を取り込んだり蒸散を防いだりする役目、さらに害虫からもを守る役目まで持っています。何かに当たったりすると簡単に剥がれてしまうので注意が必要です。
若い貯水葉はずっとみていても飽きないくらい美しいですよ。
胞子葉
下の写真は両側から撮ったものです。
〔2019年2月26日〕
〔2019年3月13日〕
胞子葉の先端の形に凹凸が少なく、わりと真っ直ぐで、両端に3つに分かれた手のような切れ目がついています。
〔2019年4月13日〕
幅広く両端が伸びて、妖怪いったんもめんが飛び出してきたような不思議な形です。これから両端は垂れ下がってくるのでしょうか。最終的にどのくらいの大きさになるのか、ちょっと怖いです。
〔2019年5月9日〕
胞子葉は、思ったよりも長く垂れ下がりました。
スパーバムとグランデの見分け方
ところでスパーバムとグランデって似ていますよね。貯水葉だけの姿では見分けがつかないですが、胞子葉で判別できるそうです。
うちのは、スパーバムで間違いないでしょうね。とはいっても、2枚目の胞子葉は、グランデのような疑わしい形のが生えてきて、ちょっとどちらかわからなくなったこともありました。どうやら葉の奇形ではないかということで落着しました。
胞子葉の奇形
この胞子葉は、昨年の夏ごろ生えてきました。一枚目のものと異なり、胞子嚢が2か所あります。だけどグランデのように左右対称の幅広の胞子嚢とはちょっと違います。暑さなどのストレスでおそらく奇形になったのだと思います。
次の葉は、晩秋に生えてきましたが、スパーバムの典型の胞子葉でした。安心しました。
1年間の育て方
10月末~3月末、肌寒くなる時期から冬の間、暖かくなるまでは主に室内で育てる
朝夕が肌寒く感じる頃になるとそろそろ室内で管理します。日中は、日差しが入る窓辺に吊るします。小さな頃は昼間だけフィカスウンベラータの幹にフックで引っ掛けていましたが、今では天井からの定位置のままです。ただし日差しの入る位置まで下げています。
また、冬でも日差しが暖かく感じる日はわずかな時間でも外に出して日光浴させてます。葉焼けしない程度に葉に当てることは必要なので、日中はできるだけ暖かく日差しが入るところに置くといいです。室内では、空気清浄機や換気で多少空気の流れがあれば、スパーバムは問題なく育てることができます。
冬の水やり
水やりは、水苔の表面を触って乾き具合を確かめてから水をあげるといいです。表面が少しパサついているけど中は湿っているくらいの状態を保つようにしています。ご自宅の環境での勘をつかみましょう。
水苔の表面が湿っている状態のときは、1日~2日に一度、霧吹きで葉に満遍なくかけてやるくらいにしています。
冬場は空気が乾燥していますし、我が家では陽の入る窓辺では日中の室温が23℃前後になります。なので案外水やりが必要な場合がありますので、基本ご自宅の環境に応じて、水やりの頻度を加減すればいいでしょう。
苔玉や板付けのハンギングスタイルは、風通しもよく乾燥しやすいので、多少水やりを多くしても過湿で腐るといった心配はありません。
表面が乾いているときは、日差しが暖かい日中外に出して、水を上からじょうろでかけてやります。
バケツに水をためて丸ごと浸け、水を十分に含ませるのもいいと思います。冬場は蛇口からの水はとても冷たいので、しばらく置いたり暖かい水を混ぜて常温にしておくといいです。バケツに浸けるのは、この冬の期間3回くらいだったので、月一度くらいのペースでしょうか。大切なのは、苔玉の湿り具合を確認することです。
4月から10月中旬、暖かい時期から真夏、秋くらいまでは外で育てる
15℃以上で暖かくなると、一日中外で管理します。10℃以上あれば生育するとのことですが、適温が20℃~30℃なので、屋外と室内、穏やかな気温の方で育てると順調ですね。
4月から6月上旬くらいの日差しが柔らかく温暖な時期がスパーバムに一番適した環境です。生長スピードも上がります。
水やりの頻度やタイミングは、やはり水苔の状態を触って判断するのが良いように思います。
春は朝に1回、初夏からは朝夕2回じょうろでじゃぶじゃぶと内部全体に行き渡るように上から注ぎます。また、霧吹きで貯水葉全体にまんべんなくミスティングしています。水やりの回数を少なくしたい場合や乾きがはやい場合は、十分水を吸わせるように丸ごと水に浸けるのもいいです。7月に入ってからはだいたい朝夕2回の水やりとミスティングで順調でした。
夏の場合は特に、気温の上がらない朝夕に水やりします。日中の高温時に水をやると、蒸しているのと同じ状態になり腐ってしまいます。また、直射日光にさらすと葉焼けするので、風通しのよい明るい日陰に置いています。
風通しのいい場所で育てることは結構大事だと思います。風通しがよいと蒸れにくいので、少しくらい水やりが多くても過湿の心配がなくなり楽に育てられます。元々東南アジアの熱帯に生息する植物ですので高温多湿を好みますが、日本の夏は温度が高過ぎるため、濡れた状態で気温が上がれば蒸し野菜と同じになってしまいます。
8月 真夏は要注意 直射日光に当てなくても熱風でも葉焼けする
真夏は直射日光に当てないように注意しましょう。また、日陰でもサウナのように高温多湿が過剰の場合は要注意です。
我が家は南向きのベランダで、かなり暑くなります。いろいろ置き場所を工夫しても、結局葉焼けを起こしてしまいます。朝のみ陽に当て、11時頃から日陰に移して管理していても、数日サウナのような温風が吹き荒れる日があるので、新しい貯水葉の切れ込みの先が縮こまった感じになって伸びなくなるのです。
また葉の縁も薄く縮れてビラビラして乾燥しすぎた薄焼き卵かクレープの端のようです。
葉の切れ込み部分は上の写真のまま生長が止まり、いじけた感じの葉になります。スパーバムの貯水葉は、熱に弱いのです。フィカスウンベラータなど観葉植物は、徐々に陽に慣れさせると案外直射日光にさらされても日焼けしにくいものですが、スパーバムは、陽に当たらなくても葉焼けしてしまうのですね。熱風が吹く日は、冷房のかかった室内へ避難させるのが得策です。
ですが多少葉焼けしても陽に当てることは大切です。遮光ネットをつかったり、午前中の穏やかな時間帯だけ陽に当てたり、木漏れ日が当たるところで過ごさせるとよいですね。葉が焼けてしまっても株が元気ならまた新しい貯水葉が生えてきます。屋外で育てる場合は、ダメージを最小限にとどめる工夫が必要です。
気温の上がらない早朝や夕方、日陰の部分に打ち水するのも効果的です。植物たちの水やりを兼ねると面倒ではないですね。打ち水の効果で、気温が下がる他、自然な空気の対流ができ、風通しもよくなります。
肥料のあげ方について
うちでは固形肥料を冬場は3か月に一度、夏場は2か月に一度くらいあげています。
写真は、2017年の夏のものですが、観葉植物用の固形肥料を苔玉の上部に置いていました。毎回水やりの度に少しずつ溶けていくようにしています。肥料好きなようですね。
下は、貯水葉が増えてからの写真です。枯れた貯水葉の間に肥料を入れています。
スパーバムは、個性的なフォルムと貯水葉が美しいのが魅力です。また、とても丈夫で育てやすいと思います。
我が家では、スパーバムの他にも7種類のビカクシダを育てています。育て方などの記事も書いているのでよかったら見てください。
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