ハオルチア・オブツーサは、葉の先端に透明な窓を持ち、キラキラとひかり輝く姿がとつても魅力的です。そして、斑入り〔バエリガータ〕は錦とも呼ばれますが、オブツーサ錦はオブツーサのキラキラに斑が入ることによって、さらに表情が付き、えも言われぬ魅力があります。琥珀斑と呼ばれる通好みの斑や日照等のストレスによって斑の部分が赤味や黄味を帯びるものもあります。
ただハオルチアが過去大ブームになった結果、多種多様な交配が進んで大量の品種が生み出され、ルーツがわからないものが非常に多いです。ハオルチアの栽培6年程度の我が家には、もやっとわからないことだらけです。そこで今回は、育てた経験に加えて、ちょっと調べて分かったことや疑問を備忘録がわりに記事にしました。
もっとも、ルーツや名前よりも、自分がいいと思ったハオルチアを購入し育てるのが一番だと思っていますけどね。
オブツーサって何?
オブツーサにはクーペリー系とシンビフォルミス系があって…などいろいろあるようですが、品種について調べれば調べるほど謎だらけです。交雑が進み、もはや分類ができなくなってカオス状態なのだと思いあきらめ、出ている名前で受け止めるということにしました。むしろ、オブツーサといえば、だれもが共通のかたちを思い浮かべられる便利な名称なのかなと思います。
作出者は、作出した品種に名前を付けられます。交配種でも昔からある品種や個性的で優れた品種は、これからもずっと名前は残ると思います。たとえば、’白蛇伝’や’赤い鳥’などです。
錦・斑入り・バエリガータって?
斑の状態を表す用語
斑の状態について、よく使われる言葉を列記しておきます。
- 全斑 斑だけで葉緑素のない葉や個体
- おばけ 全斑の個体の別名。全斑で葉緑素が全くないので生存不可な個体。幽霊ともいう。
- 青 斑の無い緑一色の個体。斑が消失して緑に戻った個体(斑抜け)
- 斑抜け 錦のものから、斑が消失して緑に戻ること
- 柄 斑の入り具合
- 上柄(良斑) バランスよく均等に美しく斑が入っていること
- 極上斑 上柄と同じく美しい斑入りのこと
- 派手斑(派手柄) 斑の割合が多いこと
- 地味斑(地味柄) 斑の割合が少ないこと
- 総柄 全体に柄が入ること
- 斑周り 斑の偏りや、がらの入り方。斑周りがよいといった使い方をする
- 後冴え 新芽のときよりも後になって斑がはっきり鮮明になること
- 糊斑 糊の様に厚い斑。表皮3層構造のうち、1~2層が斑で、その下に葉緑素を持つ層がある
- 琥珀斑 白く、まったく色素のない糊斑。
- 赤斑・黄斑 斑の部分にアントシアニンやカルチノイド等の色素を持つ。持つ色素の割合で、赤斑や黄斑になる。
最近、極上斑と銘を打つ個体増えましたよね。派手斑のものに多い気がします。ただ、親が極上斑だったから、親株からのカキコも銘を引き継ぎ極上斑を名乗っているものもあります。どう見ても斑抜けなのに錦と称しているものもあります。ご注意を。
また、全斑の株をおばけや幽霊と呼びますが、オブツーサの’ゴースト’という名で流通しているものは、色素変異体であって全斑ではありません。’ゴースト’についてはこちらに記事がありますのでご興味があればご覧ください。
斑は不安定
ハオルチアの増やし方には、実生の他、栄養繁殖があります。実生は交配によって種から生まれたものを指します。栄養繁殖とは、葉挿しや胴切り、子吹き、細胞繁殖などがあります。
植物になぜ斑が入るのかは、ウィルスやストレスなどの影響などと言われていますが、実はまだよくわかっていません。斑入りは、枝替わりといわれる突然変異でできたものが多く、ハオルチアの斑入りもその類のものです。ハオルチアの斑は、遺伝性はなく、出現は不安定なものがほとんどだと思います。
経験的なことですが、斑入り品種を増やしても、青(緑一色の斑の無い個体)や全斑(葉緑素のない葉や個体)が多く出現し、なかなか良柄の安定した斑入りはできません。自然仔吹きでは、葉挿しや胴切りに比べたら、斑入りの子株が出現する確率はちょっと高いかなくらいです。
最近いろいろな品種の錦が出回るようになりましたが、人工的な細胞繁殖によるも多いのかなと思います。また、薬による人工の斑もあります。葉緑素の破壊になる斑入りは、ダメージが激しければ全斑になり腐ってしまうか、回復して青に戻るか、どちらかを辿るといわれています。
どのような方法での繁殖でも、斑の発生は不安定なもので、錦の状態を保てるのは、時間の問題ということなのかなと思います。斑が安定して上柄のものは、とても貴重だと思います。
全斑の葉が増えてきて、危ないなと思ったときは胴切りをして再生を図るというのが、よくある対処方法のようですが、前述したように、期待どおりの結果にならないかもしれません。
ですので、我が家では、人工・自然にあまりこだわらず、好みの斑入りのものを購入しています。派手斑になったら生長はどんどん遅くなります。その間を十分に愛でるというのも、楽しみ方の一つかなと思っています。
錦の選び方
出来るだけ長く錦の状態を保ちたいのであれば、全斑や青の葉のない、すべての葉に斑と緑が入っている株を選ぶとよいのではないでしょうか。
斑の入り方に関していえば、親株の情報は参考にならないので、現物での判断になります。小苗で既に派手斑のものは先が短い可能性大ですので、生長点にも葉緑素があり、斑が安定して出現しているものを選ぶのが得策だと思います。
株で斑の部分に偏りがあるものも、きれいなバランスであれば魅力的ですが、生長点の葉にも葉緑素が残っているかが非常に大事です。
派手斑は見かけはとても美しく、手に入れたくなりますね。欠点としては、斑の部分が多いほど生長が遅くなります。全斑の葉が多かったり、葉緑素が少ない派手斑は、後々おばけになって生存できなくなる可能性が高いです。何年生き長らえるかは葉緑素がどれだけあるかで違うので、一概にどれだけ持つかは個体によります。
尚、実生のものの斑は比較的安定していると聞きます。ですので、購入時に『実生(みしょう)』というのは、結構重要なキーワードであったりするのかなと思っています。もっとも本当に『実生』かどうかは、信じるしかないのですが…。
自然な子吹きでしか得られない斑
糊斑は人工では作り出せず、自然の仔吹きでしか同様のものを得られないので、『白蛇伝』や『白銀の露』などは貴重な品種ですね。
斑入りの育て方
斑入りは、やはり、緑の植物に比べて繊細なところはあります。特に葉焼けには注意する必要があります。ですが、もともとハオルチアは、斑の有無にかかわらず、強い直射日光はNGなので、我が家では強い直射日光を避け、日当たりも徐々に慣らす方法を取っています。斑入りだからといって特別な扱いをしていません。同じように管理して、問題なく生育しています。
ただし、成長速度の点からいえば、やはり全体が緑の植物に比べて、斑入りは生長が遅いです。斑の部分が多ければ多いほど生長は遅いですね。斑の部分は光合成できないので当然ですよね。
オブツーサ錦は交配種?
オブツーサ錦は、とても範囲が広い名称ですね。同じくオブツーサ錦なのにブラックオブツーサ錦や水晶錦、ピリフェラ錦、白蛇伝、など個別に名前を持つものもあります。ネットなどで見るオブツーサ錦もそれぞれ特徴が違っていたりするので、オブツーサ錦と名がつくものは大概交雑種ですね。
オブツーサのバリエーションは、ノギ(先端の毛)や鋸歯(葉の表裏の境やキールに付いている毛)の有無、頭(葉の先端)の形が丸いか尖っているか、窓の大きさ、条理などの要素の組み合わせです。それに加えて、錦は斑の色が加わりますね。
例えば、トゥルンカータはノギがあり頭がプルンと丸いですが、OB-1はノギがなく頭が扁平です。横断面は3角。こういった品種の特徴から、何が交配されているか推測できたら楽しいですよね。
下の画像の個体は、トゥルンカータ錦とOB-1錦の名称で入手しました。2個体とも小さい苗です。でもとてもよく似ています。どちらかというとOB-1錦がOB-1らしくない感じです。OB-1はノギがないはずですが、ノギは有ったり無かったりで、頭は扁平ではなく尖り気味…。屋外では紫になるので、OB-1の血は引いているかもしれません。もう少し大きくならないとはっきりとしたことはわからないかも。
オブツーサ錦のバリエーション
オブツーサ錦のバリエーションは本当に豊かです。我が家にあるオブツーサ錦をご紹介します。
名称は入手時のものです。
オブツーサ錦
親株(大きい株)が中苗程度の時に入手しました。派手斑で総柄ですが、柄が細かくあまり垢抜けしていないイメージでしたが、子を吹いて群生になってからは、華やかでいい感じです。子株は3頭ついていますが、おばけ2頭と親と同じような錦が1頭です。錦の株が子吹きすると、やっぱりおばけはよく発生します。おばけは単体では生存できないので、葉緑素を持った個体と繋がっていることで生き長らえることができます。おばけってとても美しいので、双頭や群生はおばけの生かし方の唯一の方法ですね。ハオルチアの群生については、こちらにも記事がございます。ご興味があればご覧ください。
OM-3オブツーサ錦
派手な総柄です。こちらも割と安定していて、しばらくは安心です。黄斑ですね。屋外では、黄味が強くなります。
金子特黒×OB-1
大粒で透明度の高い丸頭の金子特黒オブツーサとOB-1を親に持つ個体。ノギがなくスッキリしてきれいです。屋外管理では斑はピンク色になります。黒に近い濃い緑とピンクが錦鯉を思わせる艶やかな個体です。
丸窓オブツーサ
かなりの派手斑ですが、一応全部の葉に葉緑素が入っています。ノギのない大きな丸窓は、つやつやで透明度が高く青光りして綺麗です。屋外ではほんの少し色づきます。
‘朝焼け’
屋外では、うす墨をながしたようような筋と生長点付近の濃いピンクが印象的で、朝焼けという名がつけられたことに納得です。
‘赤い鳥’
‘赤い鳥’は、萩原氏作出でブラックオブツーサの兄弟株だとか。(参考:日本ハオルチア協会 Official Blog 最近のハオルシア市場について February 05, 2019 )
ブラックオブツーサよりも鋸歯が目立つかな…。屋外管理ですが、割と容易に濃い赤に発色します。斑の入り方も満足ですし、大きくなるの楽しみなんですが、極小株なのですごく生長に時間かかっています。ようやくロゼットになりましたが。
巨大紫窓 大紫水晶オブツーサ錦
大型で今一つ可愛げがないせいか、ネットオークションやフリマでもあまり人気がないように感じられますが、斑周りよく大きく整った株に生長すると、かなり美しいです。屋外管理では、斑の部分がピンクに染まり、飴細工のようです。
巨大赤線オブツーサ錦
赤斑で紫の肌とよく合いますね。ただ、ノギと鋸歯が目立つので、斑まで入ると少しごちゃごちゃした感じします。
個人的に、巨大赤線オブツーサの大きくて吸い込まれそうなくらい青く光る透明度の高い窓が大好きです。錦より青のほうが、窓の美しさが引き立つかも。
ブラックオブツーサ錦
錦のオブツーサの中でも、特に人気が高いブラックオブツーサ錦。我が家も好きです。やはり同じ品種でも斑の入り方で、すごくイメージが変わりますね。
‘花水晶'(‘緑水晶’)
‘花水晶’は、スタイネリーの交配種だとか。(参考:日本ハオルチア協会 Official Blog’紫オブト錦’October 18, 2013) スタイネリーの交配種なら、オブツーサのカテゴリーに入れてはいけないのかもしれませんが、一般的にはオブツーサ錦として流通しているので、取り上げておきます。
我が家の’花水晶’は、かなりの派手斑で、全斑に近いです。まだ成長点にもわずかに緑の筋が見えます。入手当時は、ここまで派手ではなかったのですが、生長に伴い全斑の方向に向かっています。斑が少なくなるに従って、どんどん生長が遅くなっていっています。最近は、ほぼ止まっているような…。ただ、本当に綺麗です。いつおばけになってしまうかわかりませんが、見守りたいと思います。
‘白蛇伝’
琥珀斑の名品’白蛇伝’。糊斑タイプの大型種です。希少価値が高く、価格も桁が違います。品格のある白さが際立つ大変美しい品種ですね。株も直径10㎝以上に育つというので見ごたえもあります。糊斑は、すべての葉の葉裏にしっかり葉緑素があるものを選ぶと窓に青く映り美しい上に、生長も早いです。
‘白銀の露’
こちらは割と古くからある白糊斑です。生長点が分頭して増えるので、株が乱れやすい傾向がありますが、窓の模様が規則正しく揃っており、ジオメトリックできれいな品種だと思います。
‘アイススプライト’
ミルキークラウド、ピリフェラ錦、白水晶、アイススプライトの名称のものは、同品種のようです。我が家は、アイススプライトの名称で入手しました。リーズナブルな価格帯で入手できる人気の糊斑品種です。仔吹きしやすく、よく増えます。
糊斑については詳しい記事がこちらにありますので、ご興味がある方はこちらをご覧ください。
新しい情報があれば、折りに触れ更新していきたいと思います。
コメント