春秋型の多肉植物は夏と冬は休眠期に入ります。ですが、紅葉する多肉植物は秋になると色づき始め、冬~春にかけて色鮮やかに変身して楽しませてくれます。植物が紅葉するのはなぜかはっきりとわかっていないのですが、多肉植物の紅葉は、低温などのストレスに対する防御反応なのでしょうね。
紅葉時に植物の中で起こっていることなど、紅葉のしくみについて知っておくと、冬場の多肉植物をきれいに紅葉させるためにどう管理したらいいのか理解が深まります。いろいろ調べてみました。
我が家が育てている多肉植物たちも徐々に色が深まってきています。通年見頃は2月~4月で、長い間楽しませてくれます。我が家の多肉植物を例にとって、紅葉について調べたことや冬場の管理について書きたいと思います。
なお、多肉植物の寄せ植えについての2019年の記事はこちらに、2020年の記事はこちらにあります。よろしかったら見てください。
紅葉は、休眠期のからだを守る防御反応
紅葉の鮮やかな赤や紫はアントシアニンの色です。アントシアニンには抗酸化作用があるということでサプリメントにもなっていますね。アントシアニンの生成量が増えると色付くのです。
なぜアントシアニンが合成されるのでしょうか?。低温によって光合成活性が低下しているところに光を浴びると葉緑素(クロロフィル)が分解されます。アントシアニンはこの時に生じる活性酸素の生成を抑える働きがあるようです。また、アントシアニンは紫外線を吸収する働きもあるので、自ら日よけになって紫外線による障害から細胞を守っているとも言われています。春秋型の多肉植物は、冬場をしのぐために、アントシアニンを生成して太陽光などの刺激から細胞が損傷しないように守っているということなのでしょうね。
きれいに紅葉させるには寒さと光が必要
アントシアニンの合成は温度と光で調節されていて、光エネルギーによって生成されます。10℃以上の気温では生成されたアントシアニンもどんどん消費されてしまいますが、気温が低くなり消費活動が低下するとアントシアニンが葉の中に残り、色が深まります。紅葉は8℃で始まり、5℃以下で色が深まるそうです。もみじは気温が低く晴天が続くと紅葉が鮮やかになるというのも頷けますね。
多肉植物も同じく、気温が低く晴天が続くと、どんどん紅葉が進みます。
多肉植物の耐寒温度について…氷点下では、防寒対策を
寄せ植えによく使う多肉植物は春秋型のものが多いですよね。生育適温が10℃~25℃くらいで、夏と冬に休眠期を迎えます。
多肉植物は水を多く含みますから、冬の氷点下の厳しい低温や霜や雪にあたると、凍ったり凍傷となるのは想像の範囲です。また、氷点下になっている時間が長かったり、雪が降り続けている場所に放置など、その程度によっても影響はかなり違ってくるでしょう。紅葉を進めたい場合は、寒さに当てる必要があるのですが、最低温度が氷点下になる環境や、霜に当たるなど長い時間低温に晒される環境では、室内やビニール温室に取り込むといいですね。
下の表は、東京の過去3年間の月ごとの最高気温と最低気温を示したものですが、1月~2月は、最低気温が氷点下になる日もあります。お住まいの地域の天気予報を毎日チェックしておくと安心ですね。夜は室内に取り込むか、屋外でビニールや断熱材で覆ったりして過ごします。
鮮明な色はクロロフィルが完全に分解された状態?
葉緑素(クロロフィル)が分解されて少なくなるほど色鮮やかになります。クロロフィルは低温に弱く、光合成の効率も悪くなり、必要性がなくなっていくと、どんどん分解されていきます。クロロフィルの緑が減り、アントシアニンが増えて赤くなっていきます。クロロフィルが残っている状態では、緑と赤が混ざって黒ずんた色に見えますが、クロロフィルが完全に分解されると、鮮明な赤になります。
セダム属 レッドベリー
今はまだ黒ずんでますが、紅葉が進めば鮮やかになります。
多肉植物の紅葉のピークは?
春夏型の多肉植物は、紅葉が始まっても落葉せずどんどん紅葉が進行していきます。色鮮やかな赤になるということは、葉にクロロフィル(緑)がなく、アントシアニンが集まっているということですよね。
首都圏の我が家では、2~4月が多肉の紅葉がとても鮮やかな時期です。なんでかな?と考えてみました。
東京を例にとって見てみますが、下のグラフで分かるように、12月~5月くらいの1ヶ月の日照時間は、案外長いんです。秋分~春分の日まで一日の日照時間が短いのに、1ヶ月トータルで長いということは、晴天が多いということですね。
紅葉が深まるのに必要な最低気温が5℃以下になる時期を見てみると11月~4月くらいまでです。
光合成は温度と日照量の影響をうけるので、10℃以上で光合成が活発になるのは5月~10月まで、10月~4月はアントシアニンが働く時期と考えられます。
こうして、気候と重ね合わせてみると、肌寒くなるころからクロロフィルが徐々分解されて、アントシアニンがため込まれていくので、多肉植物の紅葉は、11月頃から徐々に深まり、2月~4月が鮮明な色の状態でキープされ、5月になってようやくアントシアニンが消費されてなくなっていくと考えられるのですがどうでしょうか?〔あくまで私の考察ですのでご容赦ください〕
今年3月末の多肉植物たち
赤くならない多肉植物でも、緑がうすくなったり黄色くなる
葉緑体の中には緑色のクロロフィルの他にも黄色色素のカロチンがあります。カロチンは光エネルギーを吸収する働きがあり、そのエネルギーがクロロフィルに運ばれて光合成をします。カロチンはクロロフィルよりも安定的な物質なので、クロロフィルが分解されてなくなってもカロチンは残ります。冬場、黄色くなるのは、クロロフィルが分解されて少なくなるので、カロチンの色が出てきた状態なのです。
セデベリア属ファンファーレは、やさしい色の美しい葉ですが、わずかに黄変するだけで年中姿はあまりかわりません。黄色=光合成活性が弱いということなので、よく考えてみれば、『弱っているサイン』なんですよね。
セダムのゴールデンカーペットや月の王子はみごとに黄色く紅葉しますね。月の王子の葉先はわずかにオレンジになります。
アントシアニンは水に溶ける
クロロフィルやカロチンが不溶性なのに対し、アントシアニンは水溶性で細胞液の中に溶けているそうです。多肉植物は水分豊富なので、材料となる糖とタンパク質が豊富にあれば、アントシアニンの生成は盛んになりますね。
アントシアニンの発色
アントシアニンは、細胞液が強酸性に近づくほど鮮やかな赤に発色し、弱酸性の場合は、紫色になります。そんなことを考えながら多肉たちの発色をみると興味深いですね。
クラッスラ属 火祭
鮮やかな明るい赤が美しいですね
エケベリア属 ロメオルビン
オトンナ属 ルビーネックレス
紫といったらこれですね。
冬場はほぼ断水
もともと、水は光合成をするために必要となるものです。光合成が不活発になる冬場は水を与えても根から吸水しなくなります。ですので、必要最低限にします。様子を見ながら月に一度くらい土を湿らす程度にします。空気は乾燥しているので、どちらかといえば葉水をときどき与えてあげるといいですね。
紅葉がいまひとつだと感じたら
その年や地域の気象条件で変わるものなので、ある程度は自然任せなのですが…
屋外で育てていても、ほんの少し置き場所が違うだけで、光量はけっこう違うかもしれません。直射日光に当ててみたり、一日中日が当たる場所に置き換えたりしてみてはいかがでしょうか?
また、秋口でも新芽は初めから発色よく出てきます。秋口に葉挿しや芽挿ししたものは色鮮やかになるのも早いと思います。
セダム属 オーロラ
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