オブツーサってトゥルンカータのこと?紫オブツーサとの違いは?

Haworthia cooperi v.truncata MBB386(Magwai Dam)
ハオルチア トゥルンカータ イクラ
トゥルンカータ

ハオルチアに興味を持ち始めると、必ずぶつかる疑問があります。オブツーサって何?ですよね。オブツーサの名称で流通しているのは、大概トゥルンカータですね。ですが、○○オブツーサと名の付く品種が結構たくさんあり、トゥルンカータ=オブツーサというわけでもない。オブツーサの代表種のような顔をしている紫オブツーサは、オブツーサ(トゥルンカータ)と何が違うのと、どんどんこんがらがってしまいます。

ネットでもこの話題はいっぱいあるので、色々調べてまとめてみました。我が家は、専門家でもなく素人なので、ハオルチアに興味を持ち始めたばかりという方を対象に、あくまで通念的な視点で記事を書いています。

学名と一般名

植物には、世界でも通用するように一定の規定に従って付けられた名前があります。学名と呼ばれるものです。学名は、属名と種小名と命名者名で成り立っていますが、命名者名は省略できるので、属名と種小名で表記されている場合が多いですね。例えば、Haworthia(属名) cooperi(種小名)です。

それとは別に、和名のように各言語による呼称があります。一般名と呼ばれるものです。和名はカタカナ書きが正名です。ハオルチア クーペリーが正しい和名ということですね。

学名と一般名が、同じものを違った種のように感じさせてしまう原因の一つかもしれません。

オブツーサって何?

Haworthia obtusaという学名の種は無い

Haworthia obtusaは以前は学名でしたが、現在は分類し直されていて色々な種に分かれており、この学名は正式には使われなくなりました。オブツーサといわれるものは、現在、シンビフォルミスとクーペリーの変種や交雑種のものが多いと思います。シンビフォルミスとクーペリーは、近縁種で原生している範囲もほぼ同じなので交雑していますし、変化して多くの種が生まれています。

尚、現在でもオブツーサを学名にもつシンビフォルミスがあります。Haworthia cymbiformis var.obtusaです。obtusaは『丸みを帯びた鈍形の』という意味です。丸い頭に変化したシンビフォルミスという意味合いの名称ですね。

また、紫オブツーサも一般的にはオブツーサの類として扱われていますね。紫オブツーサの原種は Haworthia vistaの一種だそうです(参考: 透明窓のハルシアの育種 林雅彦氏、日本ハオルシア協会official Blog、July 25, 2021)。紫オブツーサは、葉先にノギの無い丸頭が特徴です。我が家では、vistaは馴染みのない種だったので、ネットで調べて見たのですが見つかりませんでした。(有名な多肉専門店の名前ではありますね)。紫オブツーサは正式には紫オブトと呼ぶようです。

Haworthia obtusaは現在正式には使われていませんが、現在でも、その名を継承しているものが流通していることはあるかもしれません。

オブツーサは、俗称や総称だと思うとわかりやすい

シンビフォルミスにクーペリー、ビスタなどの系列のものが、今では交配種としてたくさん流通しており、品種としての線引きが出来なくなっています。その線引きがなくなった多くの品種をざくっとオブツーサと呼んでいるのが現状じゃないでしょうか。オブツーサといえば、葉の先端に透明の窓のついた誰もが思い浮かべるあのかたちのものの総称と思うとわかりやすいですね。

また、オブツーサと言えば、トゥルンカータを指す場合が多いですよね。トゥルンカータは、クーペリーの変種で、現在の学名は、Haworthia cooperi var.truncataです。

しかしながら、以前の学名は、Haworthia obtusa var.truncata で、俗称として オブツーサの名が残っていると思ってよいと思います。

ただ、この手のものは、交雑していても印象がさほど変わらないため、種の判別ができないものも含まれています。要するに『トゥルンカータらしきもの』ですね。そういうものもオブツーサという名で出ていると思います。もっともトゥルンカータも園芸品種と思って差し支えないと思います。園芸品種とは、交配や選抜によって原種植物を人為的に育てやすく鑑賞向きにつくられた種です。

トゥルンカータは本来原種なので、本物のトゥルンカータが欲しい場合は、採取番号や産地データのあるものが信頼できます。園芸種のトゥルンカータでよい場合は、窓の部分の丸い形状と細いノギが出ているのが、トゥルンカータの特徴なので、それで判別するといいと思います。

クーペリーの仲間

クーペリーの名は、19世紀のイギリスの生物学者のトーマス・クーパーが由来で、種小名にその名がそのままついています。南アフリカを旅行した時に発見したんですね。

クーペリーの仲間は、トゥルンカータの他に、デルシアナ、ゴールドニアナ、ピリフェラ、レイトニー、ベヌスタなどがあります。どれもポピュラーなハオルチアですね。

参考:「Haworthia cooperi」『フリー百科事典ウィキペディア』2023 年 3 月 1 日 07:47  (UTC)の版、https://en.wikipedia.org/wiki/Haworthia_cooperi

トゥルンカータの名称

学名は、Haworthia cooperi var. truncataです。

truncataの前に付くvar.は変種〔varietyの略〕です。変種とは、個体的・集団的・地方的な変異でできた品種です。略は、var.が正式ですが、以前はv.も用いられていたのか、定着している名称としてはv.truncataとなっているものも多いと思います。

和名では、トゥルンカータの他、次の4種が同種と考えられます。

  • オブツーサ
  • 雫石
  • 紫玉露
  • イクラ

オブツーサは先述した通りですが、他の3つもよく聞く名前ですね。

雫石や紫玉露は俗称?

トゥルンカータの和名が『雫石』とよく言われていますが、トゥルンカータが正名だとすれば、雫石は、和名の俗名ということになります。

また、『玉露』については小粒の丸頭のものが、従来から日本ではそう呼ばれてきたようです。紫玉露は、紅葉すると紫を帯びる玉露ですので、トゥルンカータと同種のものと考えていいように思います。こちらも和名の俗名ということになりますね。

トゥルンカータとイクラは同じ?

イクラに関しては、

  • ロゼットの径が5㎝程度の小型で、丸頭・紫を帯びる種をイクラ類と呼ぶといった総称の類とするもの
  • トゥルンカータの変異種の扱いというもの

という情報が見受けられます。いくらは、元来魚のたまごを意味するロシア語から派生した日本語ですから、前者の総称の類の方が合っている気がします。

後者のトゥルンカータの変異種扱いの方では、

  • 特定の地域のトゥルンカータの名称
  • トゥルンカータのなかでも小粒
  • トゥルンカータのなかでも赤く染まる
  • トゥルンカータで窓の透明度が高いもの

というような情報がネットでみられます。

もっとも、地域によって変異が起きやすいので、特定の地域のものが赤味が強いということはありそうです。しかしながら、粒の大きさや透明度や紅葉時の濃さなどは、個体差や管理環境、気候などの要因で変わってしまうものなので、形状やだいたいの大きさ、ノギなどが同じであれば同様のものと考えていいのではないでしょうか。

そのようなことで、我が家では、トゥルンカータとイクラは、同じものと考えています。

ちなみに我が家では、イクラの名称で入手したものと、カクタスニシさんの採取番号や産地データの入ったトゥルンカータも持っています。

ハオルチア トゥルンカータ イクラ
トゥルンカータ(イクラ)
ハオルチア トゥルンカータ イクラ
Haworthia cooperi v.truncata MBB386 〔Magwai Dam〕
Haworthia cooperi v.truncata MBB386 〔Magwai Dam〕

採取番号や産地データのあるものが、やはり一番信頼できますね。我が家のHaworthia cooperi v.truncata MBB386(Magwai Dam)は、MBB(ベイヤー氏)の採取番号とMagwai Damの産地データが付いていて、原種としてよく出回っているトゥルンカータです。これは、カクタスニシさんのトゥルンカータですが、この原種はイクラとも呼ばれています。では、Magwai Dam産のトゥルンカータをイクラと呼ぶのかといえば、これだけではその証拠になりませんね。

採取番号や産地データのない、園芸種のトゥルンカータや雫石で比べるとわかりやすいと思いますが、我が家は持っていません。ですが、園芸店などでも見かけますけれど、判別不可能なくらい皆同じものです。

トゥルンカータの錦は所持しているので比較のために画像出します。葉先にノギ有りの丸頭で、緑の部分は紫を帯びます。

ハオルチア トゥルンカータ錦
トゥルンカータ錦

ほとんど見分け付かないですよね。トゥルンカータとイクラを比べても、小粒で丸頭にノギがある点、粒の大きさもほとんど同じで見分けがつきません。子を吹きやすいのも同じです。

そんなことでイクラも俗称と考えていいのではないでしょうか。皆様はどう思いますか?

入手時の名称を引き継ぐ

まとめですが、obtusa v.truncataやイクラは、現在ではcooperi var.truncataと表記されるようになりましたが、植物は札に書かれた名称を引き継ぐため、どちらも流通しているということだと思います。また、雫石・紫玉露・イクラは、トゥルンカータと同じ俗称と考えていいと思います。ですが、採取番号や産地データが付いていないものは、見た目が見分けがつかなくても他のものと交配している可能性もあります。園芸種と考えるといいのだと思います。これら色んな俗称や古い学名で流通するのは、植物を売買するとき、入手時の名称を引き継ぐのが通例だからだと思います。

トゥルンカータを学名に持つハオルチアは、玉扇

ところで、玉扇の学名は、Haworthia truncata です。トゥルンカータは、ラテン語で『切り詰められた・頭を切り取ったような』という意味があります。サボテンや食虫植物のネペンテス、ユーフォルビアなどの品種名にも使われています。日本では、学名で呼ぶことはないので、玉扇の俗称で通っています。同じハオルチア属での名の重複が、混乱を招くタネになっていますよね。

ハオルチア 玉扇
Haworthia truncata 玉扇

ドドソン紫オブツーサとは?

紫オブツーサは園芸種?

先述のように紫オブツーサの原種はHaworthia vistaの一種類で、紫オブツーサの正式名称は、紫オブトとよびます。

要するにHaworthia vistaとの交配や選抜してできた多様な種で紫を帯びるものの総称が紫オブツーサと考えて差し支えないですね。たくさんの紫オブツーサが流通しています。粒の大きさと透明度が多少違いますが、わりと似たイメージが多いです。

その中で、特に有名なのがドドソン紫オブツーサ、Haworthia ‘Dodson Purple’ですね。著名なコレクターのドドソン氏のコレクションによるものです。OB-1とも呼ばれており、流通しているのは、どちらも同種のクローンです。窓の透明度が高く、濃紫に染まる美しい紫オブツーサです。

ドドソン紫オブツーサ OB-1
ドドソン紫オブツーサ OB-1

ドドソン紫オブツーサ(OB-1)とトゥルンカータの違い

ドドソン紫オブツーサ(以下OB-1に統一)とトゥルンカータとの見分け方について、よく話題になりますね。トゥルンカータのことを紫オブツーサの偽物という、汚名を着せられることもあるようで不憫です。紫オブツーサという名前で売ると評価額が違うという経緯もあり、偽物が出回ることになるので、初めて購入の方は、ご注意ください。

OB-1とトゥルンカータ、二つを実際に見ながら比較すると、葉の先端の形や大きさ、条理、紅葉時の濃さなどに違いがあります。しかしながら、育て方で多少かたちが変わるものですし、初見ではなかなか見分けられないと思います。また、成長するとOB-1の方が大型なのですが、子株の時は、ロゼットの径や葉の大きさでは、見分けられないこともあります。

トゥルンカータ ドドソン紫オブツーサ OB-1
左:トゥルンカータ 右:ドドソン
トゥルンカータ ドドソン紫オブツーサ OB-1
左:トゥルンカータ 右:ドドソン

一番見分けやすいのは、ノギの有無だと思います。OB-1はノギ(先端の毛のようなもの)がありません。それに対してトゥルンカータは、細いノギがあります。尚、トゥルンカータは、ノギが取れて無くなっていることもよくありますが、生長点付近はノギが残っているはずなので、じっくり見ればよくわかるかと思います。

その他、特徴での違い

OB-1は、成長すると径8㎝以上になりますが、トゥルンカータは、せいぜい径5㎝程度でそれ以上は大きくなりません。

OB-1は子株が出にくいのに比べ、トゥルンカータは子吹きしやすいです。

OB-1は、太陽下で容易に濃紫に変化しますが、トゥルンカータは紅葉するのに時間がかかりますし、若干薄い印象です。

その他の紫オブツーサ

我が家が持っている紫オブツーサはOB-1の他、2種です。

特大型紫オブツーサ

我が家が持っている特大型紫オブツーサは、正確には、Haworthia cooperi (特大型紫オブツーサ)と書いてあります。クーペリー系で、通称特大型紫オブツーサということですね。名称の通り、粒が大きいです。葉の先はノギは有りませんが先が尖っています。クーペリーと紫オブツーサの交配種なのでしょうね(個人的な推測です)。

H.cooperi  特大型紫オブツーサ
H.cooperi (特大型紫オブツーサ)

スターサファイア

紫オブツーサ スターサファイア
紫オブツーサ スターサファイア

紫オブツーサということですが、ノギがあること、ロゼットの径が大人で5㎝前後で、非常に子吹きしやすい点など、トゥルンカータによく似ています。

葉の大きさは、スターサファイアの方がやや小粒に思います。

紫オブツーサ スターサファイア
トゥルンカータ
左:スターサファイア 右:トゥルンカータ(イクラ)
紫オブツーサ スターサファイア
スターサファイアは子吹きしやすい

また、トゥルンカータが丸っこいのに対して、スターサファイアは、葉の断面の3角形がややシャープに出ているように思います。それでスターサファイアという名称がつけられたのでしょうか?子が吹いていると形が崩れてしまってわかりにくいので、下の別の株の画像で見てみます。きれいな3角が並んでいますよね。

紫オブツーサ スターサファイア

我が家の推測ですが、紫オブツーサにトゥルンカータの遺伝子が入ってそうですね(個人的な推測です)。


いかがでしたでしょうか?間違っている記述があれば、随時修正していきたいと思います。

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