千両(センリョウ)の鉢植えでの育て方:植え替えるときの注意点ー実が付かないのはなぜ?/種まきと発芽

〔2023.12.02更新〕千両の実が真っ赤に色づきました。昨年から育った枝がたくさんあがって2023年は蕾がたくさん付いたので、房の数も、一房当たりの実の数も多く、満足の出来でした。

千両 実
2023.12.02
千両 実
2023.12.02
千両 花
2023.05.24 千両の花


千両の鉢植えをベランダで育てて7年になります。毎年、株元から新しい枝が育ち、花が咲いて実をつけています。毎年変わらぬ営みによって、季節の移り変わりを教えてくれます。

赤く実った千両は、毎年我が家のお正月に飾っています。

千両は、お正月にはかかせない日本人になじみ深い植物ですね。

千両 実
千両 お正月飾り
元旦

センリョウはお正月に切り花で購入することが多いですが、一鉢あれば冬のベランダも華やかです。毎年実がなるならお得ですよね。我が家では、お正月に鉢から実の付いた枝を切り取って、部屋に飾っています。切り花で買ってくるよりも新鮮なので、我が家の千両は一か月前後実がしぼむこともなく日持ちがいいです。

千両 センリョウ 切り花

千両は、直射日光に弱く、半日陰で年中管理する植物のため、マンションのベランダは環境的にも向いていますね。我が家では、たくさん実を付けるために人工授粉など、いろいろ試行錯誤しました。そうした経験から、一年を通した千両の育て方やたくさん実を付けさせるコツ、植え替えや種まきなどを紹介します。

センリョウとは特殊で原始的な植物?!

センリョウの花は、雄しべと雌しべ一対のみ

センリョウは、センリョウ科の植物です。同じように赤い実のなるマンリョウがありますが、マンリョウはヤブコウジ科なので、全く種類が異なる植物です。

センリョウは冬の赤い実がなる頃に出回りますが、どんな花が咲くのかあまり知られていないのではないでしょうか。

千両 センリョウ 花

根元の黄緑に見えているところが雌しべで、先端に付いている白く見えるものが雄しべです。雌しべ一個に雄しべ一個がくっついた状態のシンプルな花が連なって穂を形成しています。花弁もガクもありません。雄しべ雌しべはそれそれ径1㎜×2㎜くらいです。これら一対が受粉して1つの実になるんですよね。あまりの単純構造にびっくりです。花粉は雄しべの「やく(葯)」に入っていて、生長に合わせて外に撒かれます。その花粉が雌しべの柱頭に着くと受粉します。

風媒花は受粉の媒体が風なので花粉を大量にまく必要がありますが、虫や鳥を媒介して受粉する虫媒花や鳥媒花のように蜜や色で誘う必要がありません。なので、一見目立たない花をつけますね。稲や麦、松も風媒花です。

調べたところ、センリョウは風媒花と分類されていることが多いですが、小型の甲虫が媒介する甲虫媒花としても紹介されています。

木部の構造が原始的

樹高は50㎝~80㎝で、常緑小低木です。しかし、被子植物なのに、木部をつくる主要な組織である導管がなく、裸子植物と同様の仮導管から形成されていて、原始的な植物と考えられているということです。

日本人としては、とてもなじみの深い植物ですが、そんなにヘンテコだったなんて驚きです。

センリョウの育て方

植え付け

湿った環境を好むので、プラスチック製の鉢が乾燥しにくく良いようです。もちろん、陶器や素焼きの鉢なども大丈夫。要はカラカラになるような極度の乾燥を避ければいいのです。

我が家では2017年4月に、購入時のプラ鉢から一回り大きい素焼きの鉢に植え替えました。土は、適度な水持ちと水はけのよい、よくある「花木の培養土」で植え付けました。

育てる環境

暑さ・寒さに強いので、年中明るい日陰で管理します。日陰でも育ちますが花や実のつきがやや悪くなるともいわれています。午前中の木漏れ日程度の日当たりがベストのようです。うちではベランダで直射日光を避けて明るい日陰で育てています。

直射日光が当たると、葉やけをおこして黒く変色するので要注意ですね。特に夏はすぐに葉焼けをおこし、葉の先が黒くなるので気を付けましょう。実は枝の先端に付くので、その周辺の葉は特に注意しましょう。葉の先が黒くなると実を飾るとき見映えが悪いですよね。

水やり・肥料のやり方

植木鉢の土の表面が乾いたらたっぷりと与えます。乾燥しすぎないように注意です。

肥料を与えすぎると、葉が茂るばかりで実の付きがよくないようです。2017年4月に培養土で植え替えた後は肥料は与えていません。通年では2~3月頃に緩効性肥料を少量与える程度で十分です。

たくさん実をつけるための注意点と工夫

初夏の注意点

たくさん実をつけるためには、花が咲く初夏に特に注意する点がいくつかあります。初夏の注意点をまとめてみました。

  • 直射日光に当てない
  • 水切れをおこさない
    直射日光や、水切れなどにより株が弱ると実を付けない場合があります。
  • 花が咲いている時期に雨に当てない
    ちょうど梅雨時期に花が咲きますが、花粉が洗い流されてしまうと受粉がでず結実しません。
  • 肥料を与えすぎない
    窒素が多いと枝葉ばかり茂って実の付きが悪くなります。

さらなる工夫:人工授粉や他家受粉

さらに、たくさん実をつけるための工夫として、人工授粉をしたり、他家受粉できるように複数の株を一緒に育てるのが良いです。我が家でやったことを下に書いてありますので見てください。

季節ごとのお手入れ方法と注意点

春:新しい枝が地面から出てくる

千両 センリョウ 地下茎

春になると新しい枝が次々と地面から出てきます。枝は春にたくさん出てきますが、秋も出てきます。この枝は翌年に花を咲かせ実を実らせる枝なので、大切に育てましょう♪ といってもセンリョウは丈夫で殆ど手間がかかりません。

初夏:花が咲いたら人工授粉。雨に注意。

開花

5月下旬~6月初旬ごろ、千両の花が咲きます。咲き始めの雄しべは白く見え、雄しべの先についている葯(やく)もまだ黄色く色づいていません。

千両 センリョウ 開花
千両 センリョウ 花

葯が黄色くなってくる

葯の部分が黄色く見えます。もうじき葯が開いて花粉が出てきます。大体開花から2週間前後くらいですね。

千両 センリョウ 花

6月になり花が咲きだすと注意するのは雨です。ちょうど梅雨の時期ですね。花粉が雨で流されてしまうと受粉できず実が付かなくなります。もちろん水やりも花にかからないように土にかけてください。うちでは、花が咲くと実を付けるまでは雨に当たらないように、常にベランダの奥で管理し、台風や夕立など雨が吹き込む日は、部屋に取り込んで育てました。

人工授粉のタイミング

花粉が出てくるタイミングですが、葯の周りが赤茶色になって、雌しべが少しオレンジ色に見えてくるのが目印のようですね。葯が開いて花粉が出ているのを目視するのは難しいで、虫メガネやカメラのズームで見てみるといいのではないでしょうか。

千両 花 雄しべ 花粉
千両 花 雄しべ 花粉

人工授粉は、柔らかい筆を使って、咲いている花をあちこち優しく撫でます。

下の写真のように、雄しべが痩せて透明感がなく干からびた感じになると、花粉は出た後になります。こうなるまでの間に人工授粉するのがよいです。

千両 センリョウ 花

人工授粉したほうが実の付きがいい

千両 センリョウ 実
千両 センリョウ 実

人工授粉しない年に比べ人工授粉をした年の方が実の数が多いと感じました。

夏:直射日光と水切れに注意

千両 センリョウ

8月初旬に実が大きくなりました。実の先端の黒い点は雄しべが付いていたところです。青い実も涼し気でいいですね。

この時期注意するのは直射日光が当たらないようにすることと水切れです。水は1日2回、朝夕の気温が穏やかな時間にたっぷりあげていました。常に明るめの日陰で管理です。

秋:10月中旬~下旬 実が色づきはじめます

〔2017年10月18日〕

千両 センリョウ 実

〔2017年10月24日〕

千両(センリョウ)の実 10月

10月中旬は長雨が続いたり、台風もやってきたりと、年によって天候が変動しやすいですが、概ね10月の中旬~下旬に色づき始めます。

〔2018年10月28日〕

千両 センリョウ 実

〔2020年10月25日〕

千両 実

これまでと比べて数日色づきが遅いようですが、今年も無事色づいてきました。今年も実の付きがいいので楽しみです。

〔2018年11月22日〕

千両 実

株全体がしっかり色付いてきました。色も大分深くなってきました。

冬:赤い実がついたら鳥に注意

〔2018年12月29日〕

千両 センリョウ 実
千両 センリョウ 実

造形的にきれいなように縄や支柱を使ってまとめてみました。満足な仕上がりです。

センリョウは鳥に実を食べてもらい種子を散布します。赤い実は鳥に見つけてもらうための戦略なんですね。センリョウは、先端の一番目立つところに実をつけますから、鳥に狙われやすいです。人間にとっては観賞のためのものですから、軒下の奥の鳥にみつからないところに置くか、切って室内に飾るかですね。

冬:正月

お正月用に花瓶に生けて飾るために、実の付いていた枝を年末に切り取りました。

〔2019年1月23日〕

千両 センリョウ 切り花
千両 センリョウ 切り花

リビングに飾ってからもうすぐ1ヶ月経つというのに、実はまだふっくらしていて落ちません。買ってきた枝だと1週間くらいで実がしぼんで落ちてしまいがちですよね。株から切り取ってすぐに水に浸け、水あげしたのが良かったみたいです。こんなに長持ちしてくれると嬉しいですね。

〔2021年1月1日〕

千両 お正月飾り

今年は、去年も使った細長いガラスの花瓶に紅白の和紙を巻き水引で留めました。千両だけでシンプルですが、お正月らしいあらたまった気分になります。

冬:12月~1月 古い枝や実の付いている枝を根元から剪定

枝が多すぎると風通しが悪くなるので、古い枝や実がついた枝を根元から切って整理します。剪定に適した時期は12月・1月なので、ちょうどお正月の飾りに使えば一石二鳥ですね。

千両 センリョウ 剪定

剪定の方法は難しいことは何もなく、実の付いた枝を根元から切るだけです。

千両 センリョウ 剪定後 若い枝

剪定後です。実を付けた背の高い枝はなくなりましたが、次の初夏に花をつける若い枝がたくさん育っています。

センリョウは、前年に芽を出した枝の先端にだけ花が咲くので、先端部を切り戻してしまうと花がつかなります。前年春以降に出て伸びた枝(実の付いていない若い枝)は切らないように注意しましょう。

他家受粉用に2つの鉢を1つにまとめる(植え替え)

千両は自家受粉も可能のようですが、できれば数株用意し、他家受粉ができるようにしておくと安心です。元々2株の鉢を購入したのですが、2株の元が異なる株なのかわからなかったので、一年後にもう一鉢購入し、4月に植え替えと同時に一鉢にまとめましました。

千両 センリョウ 2つ目

購入時の新しい株、実の付いた枝をお正月飾りに剪定したのち、春まで待って植え替えます。

購入したばかりの鉢で、実の付いている枝を根元から切ってしまうと、若い枝の数が少なくなってしまいがちです。実は我が家で最初に購入した千両も、購入直後のお正月に枝を切ってしまった後は、枝数が大分少なかったです。

千両 センリョウ 新旧

春になり、2つの鉢ともに伸びてきました。

千両 センリョウ 新芽

株元からは新しい芽が出てきていますね。

昨年植え替えをした左側の鉢にまとめます。まず、左の鉢から株を抜きます。

千両 センリョウ 大株

下の鉢はプラ鉢ですが、プラ鉢から株が抜きにくいときは、鉢の周りを叩いたり、鉢を強く押して歪めると抜きやすくなります。

千両 センリョウ プラ鉢
千両 センリョウ 取り出し

それぞれの株の土を落とします。2年目の大きな株は地下茎が大分育っているので根に傷をつけないように多めに土を落とします。地下茎は割と太くしっかりしているので、土を落とすのは案外簡単にできますよ。

千両 センリョウ 土落とし
千両 センリョウ 土落とし

植え替えに使う土は、2年目の鉢の土には腐葉土が沢山入っていたので、それに「まくだけで蘇る土」を混ぜて使いました。

千両 センリョウ 蘇る土
千両 センリョウ 蘇る土を混ぜる

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株と鉢の間にしっかりと土を入れて安定させます。

千両 センリョウ 植え付け

最後はたっぷりと水をあげて出来上がりです。

千両 センリョウ 水あげ

種まき

種から育てると実が付くまで数年かかりますが、種から育てることもできます。2019年に我が家で試したことを紹介します。

千両 センリョウ 種

お正月を2か月過ぎたくらいに種まきを思いつき、実を集めてみると、左はすでにしわしわ乾燥状態で、右は柔らかく完熟しています。

どちらでも発芽するでしょうか。試してみます。

種まきの前処理

果肉には発芽抑制物質がはいっているので、果肉を剥いて中身を取り出し水で洗います。そして乾燥させず濡れた状態のまま直播きします。

千両 センリョウ

しわしわ乾燥した実を剥いてみるとなかもぱさぱさしています。

千両 センリョウ 種

一方完熟の方は、指で簡単に種を押し出せます。

千両 センリョウ 種

指でこすってきれいに洗います。

左は乾燥した実の種、右は完熟した実の種です。

千両 センリョウ 種

乾燥した実の種は浮かんで、完熟した実の種は沈んでいます。種の水分量の違いでしょうか。

すでに、完熟した実の種に軍配があがり、乾燥した実の種は発芽しないのではないかと思いますが、両方とも時間を置かずこのまま蒔いてみます。

種まき

〔2019年3月2日〕

千両 センリョウ 種まき

10粒ずつ種を蒔き、薄く土をかけ、水やりしました。

千両は、鳥に実を食べてもらい、遠くに運んでもらって、排せつ物のなかに混じって落とされ発芽しますので、実が木から落ちてそのまま発芽するのは難しいようです。なので、果肉を取り去り乾燥させないまま蒔くのがいいようなのですが、やはりしわしわにしぼんだ乾燥した実の種は発芽しないのでしょうか。

結果を楽しみに待ちます。

発芽…完熟した実からとった種はかなりの確率で発芽する

〔2019年7月2日〕

千両 発芽 双葉

4ケ月後の状態です。千両は種を蒔いて発芽するまで結構時間かかります。じつは、2つともタイミングは別なのですが、容器ごとひっくり返しちゃったことがありまして、正直大丈夫かなと思っていました。ですが、6月の終わりに完熟の方に双葉を発見しました。他に発芽していないか土の中を探ったところ、根が出た状態のものを、完熟の方に5つ、乾燥の方にも1つ発見しました。深いところで種から根を出している状態だったので、浅い位置に置きなおして現在に至ります。7月の終わりにもういちど乾燥の方の土を調べたところ、根がでた状態の種を4つ発見しました。

完熟で湿った種の方が早く発根しますが、乾燥した種も発芽する可能性があります。ただし、発根しても発芽までたどり着きませんでした。これは、真夏で発芽して双葉が育つ環境ではなかった可能性もあります。完熟の方も、せっかく出た双葉が夏の暑さに萎れてしまいました。

種は1月初旬までに蒔くとよい

真夏に発芽では、日光と気温への抵抗力がありません。種まきから発芽まで、約4か月かかるとして逆算すると、11月から12月がベスト、遅くともお正月が終わったらすぐに蒔くといいかもしれません。尚、千両の鉢にも3粒くらい3月の同時期に蒔いてみました。そちらは、やはり7月に1つ発芽し、今でも育っています。葉の陰になっているところなので、育ちは悪いですが、生き残っています。

2019.11.13

上の写真から一年経ち、千両らしい葉が出てますが、まだとってもおチビちゃんです。背が伸び花を咲かせるまで、どのくらいかかるのでしょうね。あと数年かかりそうです。

2020.10.25

上写真からさらに1年経過。種まきから3年です。おチビちゃんを探す目印になってた右横の2本の幹は剪定してまわりの様相は変わりましたが、一本だけ独立して生えているのですぐ見分けがつきます。ひょろっこいですが、若木に育っています。

2021.11.06

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